「自分で豆を選んで、それを挽いて、ミネラルウォーターを沸かして、適度な温度にして、それで丁寧に淹れる」
村上春樹の、読者とのQ&A企画「村上さんのところ」で「ママ友にマニュアルの魅力を伝えたい。」という質問の返答。
この文章がめちゃめっちゃ好きで(村上さんの小説を読んだことはないけど、エッセイは好き。)、昨年から家でおいしいコーヒーを飲もうと思って、焙煎豆を販売する店を家の近くで探し、台所で豆の量とお湯の温度とか、あれこれ試した。いろいろ試した結果、ほとんどのことが、この文章に集約されているなと思って頷きました。それでは全文を。
マニュアル車って、コーヒーでいえば「自分で豆を選んで、それを挽いて、ミネラルウォーターを沸かして、適度な温度にして、それで丁寧に淹れる」みたいな感じです。そうやって飲むコーヒーって、マシンで適当につくったコーヒーとは確実に味が違います。そしていったんそういう味に慣れると、もう元には戻れません。僕はオートマチック車(ワゴンタイプ)とマニュアル車(オープン2シーター)を一台ずつ持っていますが、大きな荷物がなければ、やはりマニュアル車を選んでしまいます。運転していて楽しいから。あなたの気持ちはよくわかります。なかなかまわりの人には理解されないと思いますが。
おいしいコーヒー?いいコーヒー?
ところで、おいしいコーヒーってなに?ひとによって、おいしいなんて違うし、酸味のあるコーヒーが好きな人もいれば、苦味が好きな人もいる。おいしいコーヒーの定義は難しいけど、いいコーヒーなら定義できる。南千住にあるカフェバッハの田口護さんは「欠点豆を除いた良質な生豆を適正に焙煎し、新鮮なうちに正しく抽出されたコーヒー」がいいコーヒーだと言っています。
というわけで、おいしいコーヒーは人によって違うので、自分の好きなコーヒーを、ドリップとかサイフォンとかエアロプレスとか淹れ方を変えたり、ゲイシャエスメラルダとかコピルアックとかブレンドとか豆の種類を変えたり、自分の好きなコーヒー淹れてくれるカフェを探したりして、見つけていく。そうやって、自分だけのやり方や好みを見つけていくのってすごく楽しい。
朝、起きぬけに飲むコーヒーがおいしいと、1日がよく見える気がします。声をかけてくれたら、直接目の前で、話をしながら自分の手で、コーヒーを淹れに行きますよ。