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TOSHIKI KIDA

TOSHIKI KIDA
木田 俊樹

Let's meet somewhere in the world
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文章がうまくなる秘訣

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文章がうまくなりたい。それなら、文章がうまくなる秘訣が書いてある本を読めば、うまくなるんじゃないか、と思って、あれこれ読みました。結果から言うと、近道はなかった。あれこれ読んだ本自体は、うまい言葉ではなく、自分が経験したことを、誰でもわかる、わかりやすい言葉で、書かれていました。

 

井上ひさし「井上ひさしと141人の仲間たちの作文教室」

昨年読んだベストブックのひとつです。文章を書くのに、技術的なコツがあれば、それを真似て、すすめていけばいい、と思っていたら、ありました。

 

自分にしか書けないことを、だれにでもわかる文章で書くということ。書いたことが面白いというのは、その人にしか起こっていない、その人しか考えないこと、その人しか思いつかないことが、とても読みやすい文章で書いてある。

 

そうすると文章を書く場合に自分を研究するということが一番、大事になります。

 

「自己本位」とは何か。これは「俺がよければいい」という自己本位ではありません。そうではなくて、自分が基本である、ということです。この「自己本位」が、実は作文の基本なんです。自分のことを一番よく知っているのは自分のはずです。

 

文章は「いきなり核心から入る」こと。自分のものを相手に届けるために、ごちゃごちゃ書かずに、なるべく小さく千切ったものを、相手に次々に提供していく。そうやって、ひとつの「まとまり」を相手に届けていく。何か事件ものをお書きになるんでしたら、事件が終わったところからお書きになってはどうでしょう。「昨日、亭主を殴った。」というふうに、どうして殴ったかなんていうことは書かずに、いきなり核心に入っていく。

 

「私」とか「僕」といった自分を指す人称代名詞は、ほとんどの場合、全部、削ったほうがいいんです。日本語は主語を削ると、とてもいい文章になるというのが鉄則ですから。

 

村上春樹「やがて悲しき日本語」

僕は、村上春樹のエッセイが好きで(小説は読んだことはない)、どうしてこうも、ピッタリの比喩が考えられるんだろうと思って、エッセイばかり読んでいます。その中の「やがて悲しき日本語」に、こうあります。

 

1) 自分が何を言いたいのかということをまず自分がはっきりと把握すること。そしてそのポイントを、なるべく早い機会にまず短い言葉で明確にすること。

 

2) 自分がきちんと理解しているシンプルな言葉で語ること。難しい言葉、かっこいい言葉、思わせぶりな言葉は不必要である。

 

3) 大事な部分はできるだけパラフレーズする(言い換える)こと。ゆっくりと喋ること。できれば簡単な比喩を入れる。

 

以上の3点に留意すれば、それほど言葉が流暢じゃなくても、あなたの気持ちは相手に比較的きちんと伝えられるのではないかと思う。しかしこれはそのまま<文章の書き方>にもなっているな。

 

村上春樹「職業としての小説家」

また村上春樹です。本当にいいこと言っているんです。昨年に出版された、村上さん自身が小説を書くことについて語りかけるように書かれている本です。文章を書く前に、どういうことを考えているのか、村上さんの私見が書かれています。

 

それで僕は思うのですが、小説家になろうという人にとって重要なのは、とりあえず本をたくさん読むことでしょう。実にありきたりな答えで申し訳ないのですが、これはやはり小説を書くための何より大事な、欠かせない訓練になると思います。

 

その次にーおそらく実際に手を動かして文章を書くより先にー来るのは、自分が目にする事物や事象を、とにかく子細に観察する習慣をつけることじゃないでしょうか。周りにいる人々や、周囲で起こるいろんなものごとを何はともあれ丁寧に、注意深く観察する。そしてそれについてあれこれ考えをめぐらせる。

 

イマジネーションというのはまさに、脈絡を欠いた断片的な記憶のコンビネーションのことなのです。

 

松浦弥太郎「最低で最高の本屋」

暮しの手帖の元編集長の松浦弥太郎さんです。松浦さんが、若いころや海外で経験してきたことが、わかりやすい言葉で書かれています。読むたびに、考えさせられます。特に、台湾の話が好きです。「あたらしいあたりまえ」「今日もていねいに」も合わせて読んでみてください。

 

今の僕は、文章についてああすれば、こうすればと言える立場ではありませんが、文章を書こうと志している人にほんの少し言えるのは、文章の上手下手はあまり関係ないということです。文章の中にどれだけ真実があるかとか、親切があるかということのほうが大切だと思う。

 

上手く書くコツは何だといつも考えるんですけど、結局、人に話すようにかくことが、良いのではと思います。昨日あったことを親や子供に、恋人や友達に話すように書けばいい。

 

結局のところ

ここで取り上げた本は、「自分が経験したことを考え、他の人は関係なく私見で、わかりやすい」言葉を使って、書かれています。ということは、書きはじめる前のほうが大事なようです。そういうふうに書かれている本は、読みやすいし、理解しやすい、なにより、おもしろい。それが文章の秘訣のようだ。

 

最後にまたまた村上春樹さんです。「村上さんのところ」に寄せられた「旅行エッセイの書き方が知りたい」という質問の答えです。

 

旅行エッセイ、あるいは滞在記みたいなものは、僕の経験からすれば、はっきりとした目的意識なしには書けません。つまり「自分はこの旅行について、あるいは滞在について、一冊の本を書くのだ」という覚悟がまず必要になります。のんべんだらりんと旅行したり生活していたりしたら、本なんてまず書けません。というか、人が読んで面白いと思う本は書けません。いやしくも一冊の本を出すからには、「本を書く」という明確な意識を持った目ですべてを観察しておく必要があるからです。そうして気がついたことをどんどんメモしていきます。忘れないうちに書き留めます。それは日記ではありません。文章を書くために必要な材料のメモです。そしてそのようなメモを集めて、本にまとめていきます。面白い部分を膨らませ、あまり面白くない部分を捨てていきます。

 

その地の人々の気にさわることを書くこともたまにはあります。これはある程度しょうがないことです。旅行や滞在には面白くないこと、不快なことはつきものですから。正直になろうとすれば、嫌なことだってしっかり書かなくてはなりません。ただ、常にユーモアの精神を忘れないこと、自己をできるだけ客体化すること(ひとりよがりにならないこと)、これはとても大事です。そうすれば、その地の人が読んでも、それほど腹を立てることはないでしょう。と思いますが。